
コロナ禍で、急速に企業による導入が進んだテレワーク。具体的な働き方や、在宅勤務との違い、テレワークを導入するメリットやデメリットなどについて解説します。また、テレワークを快適にするためのポイントについても考えてみたいと思います。
多様化する働き方とその背景
コロナ禍で、テレワーク、リモートワーク、在宅ワーク、ワーケーション…さまざまな働き方にまつわる言葉を見聞きするようになりました。このように働き方が多様化した背景には、コロナの影響はもちろんですが、以前から国により推奨されてきた働き方改革があります。働き方改革とは、個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を選択できるようにするようにすることで、「一億総活躍社会の実現」を目指すものです。
例えば、労働力不足の課題に対してシニア層の就労を促進して働き手を増やしていくための取り組みや、労働生産性を向上させるために育児や介護をしながらでも働ける勤務環境を整えるなど、国としてはコロナ前からも働き方を見直す施策を打ち出していました。
テレワークの推進もその施策の中の一つであり、アフターコロナ以降においてもテレワークは推進され続けることが予想されますので、ここでテレワークの概要からおさらいしていきましょう。
テレワークとは?
テレワークとは、インターネットなどの情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間にしばられない柔軟な働き方のことを言います。アルファベットではTELEWORKと表記され、「tele(離れて)」と「work(働く)」を組み合わせた造語です。テレワークの主な形態として、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つが定義されています。
雇用型就業者のうちテレワーク制度等に基づくテレワーク実施者の割合は、2019年の9.8%から2020年は19.7%へと倍増していることからも(※)、コロナ禍で広がったことが分かります。
※国土交通省「令和2年度のテレワーク人口実態調査結果」より
「リモートワーク」との違い
テレワークと同じように、コロナ禍でよく使われるようになったリモートワークという言葉。テレワークとの違いが気になる方もいるのではないでしょうか。テレワークは、総務省や厚生労働省など国の資料でも使われており、前述のような定義があります。一方、リモートワークは明確な定義がありませんが、「remote(遠隔)」「work(働く)」という単語の意味からも、場所に縛られない働き方として使われていることが多いようです。
「在宅勤務」との違い
在宅勤務はテレワークの主な形態の一つです。言葉どおり、勤務先のオフィスではなく、自宅を就業場所とする働き方です。往復にかかる通勤時間を削減し、時間を有効活用することができます。また、移動による身体的・精神的な負担も軽減できるメリットがあります。
ちなみに、モバイル勤務は移動中の電車やカフェ、ホテル、空港のラウンジなどで就業する働き方を言い、サテライトオフィス勤務は、会社が契約した施設などで就業する働き方のことを言います。なお、サテライトオフィスには、企業が専用で使うものと、複数の企業や個人事業主などと共用するものがあります。
テレワークを導入するメリット
企業がテレワークを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、考えられる5つのメリットについて解説します。
業務効率化や生産性のアップ
例えば営業職の方の中には、めんどうだと思いながらも、顧客に提出する資料や見積もりを印刷するために一度会社に戻ってから訪問する、という経験がある方もいますよね。モバイルワークによって出先でノートパソコンを使って業務を行うことができるようになれば、無駄な移動時間を削減することができ、業務効率化や生産性のアップに繋がります。
通勤にかかる時間や負荷の軽減
満員の通勤電車がつらい、保育園の送り迎えに合わせた時間調整が難しいなど、通勤に関わる悩みはつきものですよね。通勤時間を削減できるテレワークは、社員のワーク・ライフ・バランス向上の面からも有効だと考えられます。
多様な人材の確保
企業の中長期的な成長には、多様な人材の確保が欠かせません。テレワークという柔軟な働き方を取り入れることで、多様な価値観をもつ優秀な人材を採用しやすくなります。また、出産・育児・介護・パートナーの転勤などのライフイベントをきっかけにした離職防止にも効果があります。
コストの削減
社員が出社するオフィスを維持するためには、オフィスの賃料や電力・備品などのさまざまな関連コストがかかります。テレワークを導入して出社人数を減らすことで、オフィスの規模を縮小したり関連コストを削減したりすることができます。また、自宅から営業先に直行直帰することで、社員は移動時間を削減でき、企業は交通費や残業代を抑えられます。
デジタル化の促進
国がDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進していることからも分かるように、デジタル化による社会変革が急速に進んでいます。テレワーク導入をきっかけに、経理精算の電子化やWeb会議の導入などを行い、社内業務のデジタル化促進、ひいては業務改善を実現することができます。
テレワークを導入する際の注意点・デメリット
ここまで、企業がテレワークを導入するメリットを中心に解説しました。次に、注意点やデメリットについても解説します。
一気に導入せず段階的に進める
注意点として、テレワークを一気に導入すると社内が混乱したり、継続が難しくなったりする可能性があります。コロナ禍などの緊急時を除き、プロジェクトチームが中心となって横の連携をとりながら、段階的に進めると導入がスムーズになります。テレワークを適用する業務範囲や対象者を限定し、社員や周りの意見を参考にしながらPDCAを回していくと良いでしょう。
情報漏えいやセキュリティリスクにそなえる
テレワークでは、使用するノートPC、タブレット、スマートフォンから社内システムにアクセスし、データのやり取りを行うことになります。テレワーク導入の障壁になりやすいのが、このデータのやり取りに伴う情報漏えいやセキュリティリスクへのそなえです。
テレワークで行う業務内容や予算に合わせて、さまざまなパターンから検討すると良いでしょう。また、周りに人がいる状態でパソコン作業をするときの禁止事項など業務内容に合わせたルールを設けたり、社員向けにセキュリティ研修を実施したりすることも大切です。
〜主なテレワーク方式〜
● VPN方式
テレワーク端末からオフィスネットワークに対してVPN接続を行い、そのVPNを介し てオフィスのサーバ等に接続し業務を行う方法
●リモートデスクトップ方式
テレワーク端末からオフィスに設置された端末のデスクトップ環境に接続を行い、そのデスクトップ環境を遠隔操作し業務を行う方法
●仮想デスクトップ(VDI)方式
テレワーク端末から仮想デスクトップ基盤上のデスクトップ環境に接続を行い、そのデスクトップ環境を遠隔操作し業務を行う方法
●クラウドサービス方式
オフィスネットワークに接続せず、テレワーク端末からインターネット上のクラウ ドサービスに直接接続し業務を行う方法
総務省 テレワークセキュリティガイドライン(第5版)より抜粋
勤怠管理や人事評価の体勢を整える
始業・就業時間の管理方法の検討が必要です。また、人事評価制度については週1〜2日のテレワーク実施であれば大きな変更は必要ないかもしれませんが、それ以上の場合は、新しい働き方に合わせた人事評価制度に変えていく必要があります。
人事評価は、給与やキャリアプランへの影響が大きく、社員のモチベーションに直結します。社員が前向きな気持ちで長く活躍できるよう、実績・実態に即した人事評価を検討しましょう。
ワークフローを見直す
テレワークで業務を行う社員が増えた場合、これまでのワークフローでは支障が出る可能性があります。テレワーク導入を生産性向上につなげるためにも、業務の見える化を行い、ワークフロー全体を見直し・改善することが大切です。
具体的には、現状のままで問題ない業務、対策を行うことで可能となる業務、実施が難しい業務に分けて考えていきます。
遠隔でコミュニケーションが可能なツールを導入する
テレワーク導入後も、会議や社員同士の業務に関するスムーズなやりとりが重要です。Web会議システムや電話会議システムなどの導入を検討しましょう。
また、メールではなくビジネスチャットを導入する企業も増えています。コロナ禍でさまざまなサービスがリリースされたり機能が拡充されたりしているので、比較検討することをおすすめします。
テレワークは環境が重要! 快適な働き方を実現するには?
企業の制度や仕組みだけでなく、テレワークをより快適なものにするために必要なものはなんでしょうか。それは、働く環境を整えることです。オフィスで働いているときは全て会社が整備してくれますが、在宅勤務の場合は自分で行う必要があります。
机はもともとあるものを使えるけれど、椅子は長時間座るにはちょっと…ということもあるかもしれません。イトーキが発売している在宅ワーク用の椅子は、身体にフィットし正しい姿勢で座れるようにさまざまな工夫がされています。機能、デザイン、ご予算などから選んでいただけるよう、豊富なラインナップを取り揃えています。身体の疲れ方や集中力に違いが出てきますので、新しい働き方をより良いものにするためにも、自分に合った椅子を選んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、コロナ禍で急速に進んだテレワークについて解説しました。テレワークは、主な形態として、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つが定義されています。在宅勤務の場合、自分で働く環境を整える必要があります。特に、長時間座ることになる椅子は業務の生産性を左右しますので、機能やデザイン、ご予算などから自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。