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横石さん、日本人は働き方を変えることができますか?

横石さん、日本人は働き方を変えることができますか?

毎年11月に開催されている「TOKYO WORK DESIGN WEEK」は、経営者や有識者などを迎えこれからの働き方を考える「働き方の祭典」。このイベントを主宰する横石崇さんのお話から、働き方の動向を知ることができました。


横石 崇(よこいし たかし)
株式会社&Co.(アンドコー) 代表取締役・プロデューサー 
TOKYO WORK DESIGN WEEK 主宰

55歳の来場者が急増?! 働き方の祭典とは

――横石さんが立ち上げた「TOKYO WORK DESIGN WEEK(以下、TWDW)」はいまや、国内最大級の働き方イベントといえそうですね。

ありがとうございます。13年から毎年、「勤労感謝の日」の前後7日間に開催しています。来場者は20代〜30代が中心ですが、最近は55歳の方々が一気に増えましたね。

――55歳?!

役職定年にあたる方々です。お名刺を拝見すると「元部長」なんて肩書きがついている方も(笑)。働き方というより、生き方を考えるきっかけにして頂いているようです。TWDWは「働き方の祭典」と銘打っていますが、働き方を通じて、自らの生き方や価値観を見直す場になっているのが特徴です。

――イベントを立ち上げたきっかけを教えてください。

東日本大震災、そしてリンダ・グラットンの『ワーク・シフト』(2012年、プレジデント社)を読んだことがきっかけです。世の中の価値観や生き方が揺れ動いていた時期で、私も勤めていた広告制作会社を震災後に辞めました。

影響を受けたのは、今でいう「ホラクラシー」的な働き方をする人たち。ヒエラルキーやトップダウンではない組織を好み、自ら主体的に働く人たちを指します。このような働き方をする方々を繋げるプラットフォームを作りたいと思うようになって。はじまりは5〜6人の勉強会でしたが、徐々に大きくなりました。

インタビュー風景

感動のあまり泣いてしまう人もいます

――毎年、異なるテーマを設定されているんですね。

はい。根幹には「働き方、肩書き、働く場所はひとつではない」というコンセプトがありますが、年によってテーマを変えています。1年目の2013年は「ARE YOU READY FOR THE FUTURE OF WORK?(未来の働き方の準備はできているか?)」でした。働き方が大きく変わる機運があったからです。その後も「Discover the Future of Work」「Building Creative Leadership!」のように、時代や世相に合わせてテーマを変えています。

また登壇者が発するキーワードにも世相が現れます。ある年は「コミュニティ」について語る方が多く、働く人たちが社内外でどう繋がるか、コワークするかに興味が集まっていました。が、翌年は個々の主体性が重視されており、「リーダーシップ」というキーワードが多く聞かれました。

――「働き方」には、実に多くのテーマが含まれているのですね。

肩書きが「doing」だとしたら、そこに見えない自分のありかた、人となりは「being」。「働き方は生き方のインターフェース」といわれますが、働き方が生き方に表れるし、生き方が働き方に表れるんです。

講演やワークショップに参加して人生観が大きく揺さぶられ、感動して泣きはじめる人もいます。ちなみに運営メンバーは20代を中心とした150人ほどのボランティアで構成されていますが、約7割がTWDWに関わったあとに転職や独立などに踏み切っています。

インタビュー風景

カラオケルームがワークプレイスに?!

――企業で働くだけでなく、地域に貢献するなど、さまざまな“働く”が生まれています。今後、働き方はどのように変わると思いますか。

「役職から役割へ」という流れは止まらないでしょう。それは「会社からチームへ」という流れでもあります。ヒエラルキー型の組織で仕事を動かす時代は終わり、メンバーの役割が重視される。

役職は「タイトル」で表現されますが、役割は「タグ」で表現されます。「プログラミング」「イベントプロデュース」「AI」など、自らの興味や強みが「タグ」です。そのタグを掛け合わせたら、その人の働き方や生き方になる。タグをAIに解析させたら、会社を超えたドリームチームが生まれるかもしれませんね(笑)。

――働く「場」についてはどうお考えですか。

プロジェクトルームがたくさんできるといいですね。これからの組織は、固定化されたものではなく、プロジェクトごとに縦横無尽に構成されていくと思うんです。カラオケルームのあるビル一棟をまるごと買い取って、プロジェクトごとに使えるようにする。「蜂の巣のようなプロジェクトルームがたくさんあるオフィス」のようなイメージです。山手線各駅にそんな場所があるといいですね!

――面白い発想ですね! 最後に「働き方の祭典」を5年続けてこられた横石さんに質問です。日本人は働き方を変えられると思いますか?

労働時間を短くし、遊ぶ時間を増やそうとするのが昨今のトレンドですが、日本人ってなかなか遊べない人たちだと思います。遊ぶって難しくないですか。プレミアムフライデーも「仕事を切り上げて飲みに行こう」と提唱しましたが、むしろ「自己成長に時間を割こう」と呼びかけた方がよいのではないでしょうか?「労働しない」のではなく、むしろ働くことを前向きに捉える方向です。

日本は国民の三大義務に「勤労の義務」を掲げていますよね。そして勤労を通じて、人々が感謝しあえる風土もある。これ、とても素敵な文化だと思うんです。2017年のTWDWのテーマは「勤労に、感謝を」でした。AIとの共生で「人は働かなくてもよくなる」と言われるいまだからこそ、勤労が尊いもの、幸せなものになると私は感じています。

<横石さんにとって「働く」とは?>

働き方は家庭の問題でもあります。実際、我が家にも子どもがいて育児に追われている。「働く」前に、目の前の生活や人を大切にする。それが私の働き方です。

「皿を洗え」

PROFILE

横石 崇
横石 崇
Yokoishi Takashi

株式会社&Co.(アンドコー) 代表取締役・プロデューサー 
TOKYO WORK DESIGN WEEK 主宰

1978年大阪市生まれ。多摩美術大学卒業後、テレビ局グループ会社、広告制作会社、人材紹介会社の役員を経て、2016年に&Co.設立。2013年から「TOKYO WORK DESIGN WEEK」を開催するほか、ブランド開発や事業コンサルティング、クリエイティブプロデュースをはじめ、人材教育ワークショップやイベントなどを行う。やさしさの学校「NEW_SCHOOL」、旅する勉強会「ラーニングキャラバン」主宰。著書に『これからの僕らの働き方: 次世代のスタンダードを創る10人に聞く』(早川書房)

※所属部署・役職は取材当時のものとなります
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あらゆるビジネスで活躍するキーパーソンに聞く、あなたにとっての「働く」とは?インタビューを通して多彩な価値観に触れるこのシリーズ。これからの時代に求められる「働く」へと迫ります。