トップに戻る
働き方 レジリエンスと向き合う

「考える力」こそが、新しい道を切り拓く!

「考える力」こそが、新しい道を切り拓く!

おかげさまで、たくさんのアクセスをいただいている「レジリエンス」シリーズ。
経済学者で国際大学GLOCOM准教授の山口真一さんと、イトーキ 先端研究統括部統括部長の大橋一広さんによる対談でお送りしています。

この時代をしなやかに生き抜くには、自分の「こころ」をどう扱うべきか。
今回は、新しい働き方に対応するための3つ目のポイントについてお届けします。

「道を作れる人」って、どんな人?

大橋 3つ目となるポイントは、「『やり方』や『方法』の考え方」でしたね。

山口 はい。前回の「主体性」の話では、自分の仕事に対して「自分で取り組んでいる」と捉えることの大切さをお伝えしました。今回はそこからさらに一歩、進んで考えてみます。
私は、物事に対して「どういう方法をとるか」というところに、その人ならではのオリジナリティが強く出ると考えているんですね。たとえばある仕事に対して「やり方」も合わせて指示を受けたとします。そこにとくに疑問を持たずに言われた通りにコツコツやる人と、「もっと効率的な方法はないかな」と考えてみる人、2つのタイプに分かれますよね。

今のような「誰も経験したことのない」新しいシチュエーションに対応するためには、この「やり方」や「方法」も含めた創造性がとても重要になります。

なにしろ、マネージャーも今まで経験したことのない状況です。誰も「どうしたらいいか」を教えてあげることができない。こんな場面では、自分自身でパフォーマンスを上げる「方法」を考えて、解決していかなければならないからです。

そのため、今後は「学校教育」のあり方も考えていく必要があるのではないでしょうか。全員が一律で同じことをするのではなく、目的が与えられたときに「どういうルートを取るか」をこそ、それぞれが考えられる教育に変わっていく必要があるでしょう。

大橋 教育には、僕もとても関心があるんです。たしかに、過去には「大量生産時代」に応じた、「正しい答え通りに同じことを規律正しく」行うための教育が主流に行われてきましたよね。でも、今はそれが大きく変わりつつある。「みんなと同じに」から180度転換し、それぞれが自分で考えて道を作れる人になるための教育が求められています。

僕自身もそういう視点を大切にして、自分の子どもには「自分で考えて、選択して、興味をもっていることをやってほしい」と話しています。僕自身はそんな教育を受けてこなかったですし、学生のころに学んだことや知識は、今は時代遅れでもう通用しません。親世代と子ども世代で、求められるものが全然違う……ということが起きているんですよね。

ある教育関係者の方が言っていたのですが、日本の教育は世界的に見て、「みんなが平等に高度な教育を受けられる」という意味で、制度としては成功した。でも、学校や先輩から習ったことがない課題が出たときに「それは教えてもらっていません」と答える子どもや大人たちがたくさんいる。それは「日本の教育の敗け部分なんだ」と。

山口 そうですよね。さらに、「知っている」ことと「考える」ことの違いも大切です。たとえばネットの情報を見てわかった気になっただけでは、「先生から一方的に教えられる」状況とさほど変わらず、いわば知識として「知っている」というだけになってしまいがち。そうではなく「考える」ためには、小さな子どものころから日常的に習慣付ける必要があるかもしれないですね。

大橋 ただ、みんながみんな創造性を発揮するのが好きだったり得意なわけではない、ということも考えなくてはならないところです。僕自身は新しいことが好きな好奇心旺盛タイプなので、自分で考えていろいろとチャレンジすることは好きなんです。反対に、同じことをずっと何度もやる、というのはあまり得意でもない。でも「仕事」において、いつも新しいことばかりやっていればいいわけではないですよね。

逆にいつもコツコツと着実に進めていくことが大切な場面もある。そう考えると、いよいよ「いろいろな働き方」や「発揮する能力」があっていい、と思うんです。ただ、AIなどの新技術の台頭によって状況に変化が訪れることもある。その場合、どこに自分の価値を見出していくかは考えなくてはいけないですよね。自分の効力や貢献はどこにあるのか、その問いを常に持っておくことが重要になるかもしれません。

山口 そうですね、その昔も機械化によって大量の離職者が生まれたように、なにかのきっかけでどうしても思うようにいかなくなることもある。組織は彼らに対し何をどう任せるか、どうフォローするかが求められていくでしょうね。この点は正直、まだ明確な回答は誰も持っていないので、どの組織でも今後の大きなテーマとなっていくかもしれません。

ただ、このコロナ禍では、どの人もみんな自分の働き方を見つめ直している。働き方が変わったというだけでなく、「仕事とは何か」、そして「自分ってなんだろう」という哲学的な問いを自分に投げかけている人は、多いのではないでしょうか。
そういう意味では、どの人もいま同じ状況にある、といえるかもしれませんね。

インタビュー風景

◇  ◇  ◇

新しい時代を生きるための、新しい教育。これから大人になる子どもたちは、私たちの想像をはるかに超えた成長を見せてくれるかもしれません。
そう考えると、未来がとても楽しみになってきませんか?

いよいよ次回は、新しい働き方に対応するための最後のポイント、「相手への尊重」についてお話を伺います。

カテゴリー
働き方
タグ
レジリエンスと向き合う

レジリエンスと向き合う

受けたダメージを回復したり、環境へ柔軟に適応するしなやかな状態をつくる「レジリエンス」。何が起こるか分からないこの時代だからこそ、注目が集まるレジリエンスにとことん向き合います。