階段の下!?
「働く場所は人それぞれ」を真剣に実現した話

 

「ONOFF」の回でご紹介した、「鎌倉リビングラボ」のエピソード。
鎌倉市に住む一般の方といっしょに、在宅ワーク用の家具を完成させるまでをお伝えしました。

 

今回はその第2弾として、もう一つの開発アイテム「UBIQ」が誕生するまでのストーリーをお届け。持ち運べるユニット型デスク&チェア「UBIQ」は、どのようにそのカタチへとたどりついたのか。その具体的なやりとりにぜひ、ご注目ください!

 

「じつは、特等席は階段の下なんだよね」

 

鎌倉リビングラボでは、いつも活発な意見交換が行われていたことは「ONOFF」の回でも触れた通り。6ヶ月間に渡るディスカッションで交わされた言葉を抽出、分析し、そこに潜むニーズを浮き彫りにしていきました。やがてその追求は、「ONOFF」のコンセプトとなった「オンとオフ」とともに、もう一つの言葉にたどり着きます。

 

それは、「どこでも」。
つまり、自分の好きな場所で、「どこでも」仕事がしたいという思いでした。

 

ある時のディスカッションで、参加者のお一人がこんな発言をしました。
「じつはうち、階段の下が一番の特等席なの。そこで仕事ができるような家具が欲しいんだよね」と。

 

えっ、階段の下!?と一同驚いたのは言うまでもありませんが、そこには思った以上に「人それぞれ」の幅が隠されていることに気づかされます。「天気のいい日は外で仕事したい」という人もいれば、「リビングで子どもを見守りながら働きたい」という人もいて、タイミングや仕事の内容によって変わってくることももちろんある。「移動できるテレワーク家具」は、想像以上に待ち望まれているのかもしれない……そんな発見から、「UBIQ」の開発はスタートしました。

 

「あれ、意外と小さくても大丈夫なんだね」

 

最低限必要なデスクの大きさを検証する様子。参加者それぞれがテープで面積を示した

 

「移動できる」というコンセプトに対し、まず立ちはだかったのは「重さ」「大きさ」の壁。持ち運ぶためには、コンパクトかつ軽量であることは必須です。しかし、仕事をする場である以上、不便さとの引き換えになってはいけない。そんなジレンマの中で、まずは「いちばんちょうどいい」デスクの広さを考えてみることに。

 

参加者の一人ひとりに、仕事のために最低限に必要なスペースのサイズをテープで示してもらいます。「PC作業メインだから広くなくてもいい」「書類が近くに置けないと困るから、せめてこれくらいは欲しい」と、ここでも「人それぞれの幅」が存在します。その最大公約数はどこか……。検証に検証を重ねた結果、それは「43cm×33cm」であることがわかりました。

 

「あれ、意外と小さくても大丈夫なんだね」

 

と思わず声が出てしまう、そんなコンパクトさです。こうして、UBIQの天板サイズが決まったのでした。
そこに、「使わないときはすっきりと収納できる」「高さが異なる3つのテーブルを組み合わせて使う」などほかのコンセプトも盛り込んでいき、「UBIQ」の基本の形が固まっていったのです。

 

今回も大活躍、「ダンボール職人」!

 

実物大で作られたダンボール製の模型。実際の使用感をここで突き詰める

 

「ONOFF」のときと同じく、今回も出来上がりのイメージをつかむためにCGとモックアップ(模型)が活用されました。デスクとチェア、それぞれを自由に組み合わせて使用する「UBIQ」は、そのサイズ感をつかむために模型は必須。今回もダンボールで実物大の大きさに仕上げ、組み合わせるアイテム同士のサイズ感も調整しました。実際にPCを置いたらどんな使い心地になるか、この段階で検証を繰り返しています。

 

その後は試作品の製作から、実際に生活シーンで使用してもらう「使用検証」へ。すると、「子どもが使いたがって、ふだんより熱心に勉強していました。だから逆にダイニングテーブルが空いて、私の仕事がはかどったんです」といった感想が寄せられました。こちらが想定していなかったメリットや思わぬ使い方などがいくつも見つかり、やはり「暮らす人といっしょに作っていく」ことの意義を改めて感じる過程となったのでした。

 

ここから約1年、さらに改良に改良を重ねて、ついに「UBIQ」は誕生しました。

 

ついに完成した、まったく新しい家具「UBIQ」

 

鎌倉リビングラボ共同開発商品「UBIQ(ユビック)」

 

 

 

S、M、Lサイズのデスクを組み合わせ、チェアとして使用するだけでなく、ときには立った状態で、ときには床に座っても。天気のいい日は庭で、今日はリビングで。そんな多彩な使い方を叶える、これまでにない家具として完成しました。パーティションもラインナップに加え、ちょっとした個室感覚でこもりたい時のワークスタイルを応援します。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

このプロジェクトに携わったイトーキのメンバーには、市民の参加者からかけてもらった忘れられない言葉があるそう。それは、「どんなに優れた商品でも、家族に受け入れられるものでなければ家に入れることはできない」というもの。【とにかく、いいものさえ作ればいい】とどこかで思っていたのではないかと、ハッとさせられる一言でした。それからもこの言葉はずっと心に残り、その後の商品開発のときも何度も思い返しているといいます。

 

たとえメーカーから見てどんなに「いいもの」だと思ったとしても、使う人、そしてその暮らしや家族まで見据えていないと、決して「いいもの」にはなり得ない。その気持ちを胸に、これからもイトーキは本当の意味で「いいもの」を作り続けていきたいと考えています。

 

この記事で紹介した商品