「暮らす人たち」のチカラがなければ、
生まれなかった家具がある

 

「家具が生まれるまで」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
デザイナーさんがスケッチを描いて、設計され試作を経て、職人さんの手や工場でカタチになっていく……という流れは、おそらく多くの方が想像するところだと思います。でも、その前の「どんな家具を作ろうか?」という企画の過程がどのように行われているか、ご存知の方はあまりいないのでは。

 

今回は、ちょっと変わった過程を経て誕生することになった家具のお話をお届けしたいと思います。

 

11年前から、「在宅ワーク」と真剣に向き合ってきた

 

ご存知の通り、いまは在宅ワークが急速に浸透しました。「家で働く」ということがいわば当たり前に近くなってきた、といえる状況です。在宅ワーク用の家具、と聞いても、「ああ、今はそうだよね、必要だよね」と自然に聞こえるようになりました。

 

ところが、じつはイトーキでは、なんと2009年から「在宅ワーク」について研究を行っていました。
未来の働き方について考えを巡らせたとき、やはり一番身近にあるのは「自宅で働くこと」。家具を手がけるイトーキとしてその未来のためになにかできることはないかという発想から、イトーキが擁する「ワークスタイル研究所」での研究がスタートしました。じつに11年前から在宅ワークと真剣に向き合ってきたというわけです。

 

2017年、夢が動き出す! 「鎌倉リビングラボ」との出会い

 

この活動に大きな転機が訪れたのは、2017年。それまで産学官連携で交流のあった東京大学から、「リビングラボ」という活動をご紹介いただいたのです。リビングラボとは、新しい技術やサービスなどの開発に、生活者である一般の方々が参画するという活動のこと。いわば、まちの主体である住民が、暮らしをより良くするための「モノ」や「コト」を生み出していく、という試みです。

 

イトーキが出会ったのは、神奈川県鎌倉市の今泉台地区。この地域には、住民約5000人のうち約45%を65歳以上が占めるという、高齢社会への課題がありました。「子育て世代が【住みたい】と感じるまちにするには?」という問いに、一つの答えとして浮かび上がったのが「在宅ワーク」でした。

 

「新しい働き方を実現して、まちを活性化したい」という思いのもとに、鎌倉市民のみなさんと鎌倉市、東京大学、そしてイトーキが集結。「在宅ワーク用の家具をつくる」ためのチームがここに誕生したのです。

 

「暮らす人」の声が、家具というカタチになっていく

 

 


「どんなときに、そう思う?」
「ここがもっと、こうならうれしい」
そんな自然な感想や意見が、大きなチカラとなって家具のディテールを形作っていくプロセス。市民のみなさんがここで「暮らす」ときに、どんなものがあればうれしいのか。場を直接共有しながら、たくさんのコミュニケーションを交わす中でいくつかのキーワードが浮かび上がってきます。

 

その一つが、「オンとオフ」でした。

 

オンとオフ、つまり仕事と生活の切り替えです。ただ、切り替えといっても、小さい子の様子を見ながら仕事をしたいときもあれば、しっかりと集中したいタイミングもある。では、どういう形ならそれを叶えられるの?その試行錯誤とディスカッションは、数限りなく行われました。

 

えっ、ダンボール職人!?

 

 

そのために非常に有効だったのが、CGとモックアップと呼ばれる模型でした。実際のできあがりをイメージするには、やはり目で見るのが一番。モックアップはダンボールを使用して実物大に組み上げ、動きも再現しました。これはとてもわかりやすく、市民のみなさんも「ダンボール職人!?」と驚いていたといいます(笑)。実際に体を合わせてみることで、使いやすいサイズ感や構造上の不便さを見つけることができるのも、大きなメリットです。

 

それによって使い勝手を実際に確認し、問題点をあぶり出して、試作品を作成。さらにそれを実際に生活環境の中で使用検証し、ようやく完成へ。そうして生まれたのが、テレワーク用家具の「ONOFF(オノフ)」でした。

 

鎌倉リビングラボ共同開発商品「ONOFF(オノフ)」

 

ぱたんと閉じることのできるつい立てが、パーティションのような役割を担います。椅子に座れば適度に視線を遮りますが、少し背筋を伸ばせば周囲を見渡せる絶妙な高さ。仕事を始めるときには開いて「オン」、終えるときには閉じて「オフ」と、物理的にも心理的にもスイッチしやすい画期的な構造。
実際に作業する人が使いやすいかどうかを考え抜いて作られた奥行きやちょっとした棚など、在宅ワークの快適さを格段に上げてくれる工夫がたくさん込められています。

 

「鎌倉リビングラボ」のプロジェクトに携わったイトーキメンバー

 


この活動に携わったイトーキのメンバーは、当時のプロジェクトの思い出を一つひとつ、いきいきとした表情で語ります。製品が完成に至り、最後の打ち上げで撮影した写真はまるで長年の友人たちのように打ち解けた笑顔。大きな課題に向かって一緒に取り組む「共創」は、かけがえのない価値を持っていることを改めて教えてくれるようです。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

単なる「市場調査」では決して得られない、「暮らす人たち」の本音から生まれた家具。
これなら、きっと快適な「オンとオフ」を叶えてくれるはず。
あなたにぴったりの「新しい働き方」を、ぜひ「ONOFF」といっしょに探してみては?

 

この記事で紹介した商品